「K大の入試問題はかなり制覇してきたからな。傾向と対策はばっちり俺が教えてやるよ。」

「はぁ?タイスケが私の家庭教師になるわけ?」

「そうよ。何か問題でも?」

タイスケはにんまり笑った。

「あんたに借りは作りたくないんだけど。」

「借りになんかしないって。俺も一緒に目標目指すダチが欲しかったわけよ。その方が張り合いも出るしさ。」

「他に友達いるでしょ?何でよりによって私なんかに。」

「何でだろね?」

急にタイスケが真面目な顔をして、私の目をのぞき込んだ。

な、何よ。

タイスケのクリンとした目が少し光ったように見えた。

「ま、いずれにせよ、これからは猛特訓だぜ。剣道二段なんか狙ってる場合じゃないって。勉強に全てシフトしろ。」

「嫌よ。私、二段取るのは意地をかけてるんだから。」

「まだ、マヨと張り合ってんのかよ。」

タイスケは急に冷たい眼差しで見下ろしてきた。

違うわよ。

そんなんじゃない。

ただ、剣道部やってきて。

これだけはやった!って思える何かが欲しいだけ。

今まで、そういうのなかったからさ。

「マヨと張り合っちゃ悪い?」

気持ちとは別の言葉を返した。

「べーつに。」

タイスケはスッと目をそらすと、窓の外を見ながらポテトをわしづかみにして口の中へ放り込んだ。