おい、何か苦しいぞ。

「目を覚ましおったか」

お前は……名も知らぬ少女Cか。

「AとBはどこ行ったのよ」

少女A! お前も居たのか!

「あたしかいっ!」

痛いっ! イタイイタイ! まつげを引っ張るな! 何だその新しい攻撃はっ!

「名乗ったでしょーが」

佐藤な、佐藤。どうせ偽名だろうが。

「はいはい」

んん? 苦しいと思ったら鼻にティッシュが……。

「何だか分からんがの。ぬし、鼻血を出して倒れおっての」

バカな! そんな! 俺は、ロリコn……。

「とんでもない変態ねぇ」

ええい黙れ馨! 

「年上は敬えって教わんなかったのかしらぁ?」

痛いっ! イタイイタイ! まつげを引っ張るな! マツゲハゲになるっ! ちょっ……離してっ! わかりましたすいませんでした馨さん!

「分かればいいのよぉ」

見ろ! モノモライみたいになってしまったではないか!

「幾分男前になったのぉ」

腫れた目のほうがマシって、俺そんな酷い顔でした?!

「もう、そんな事はどうでも良いのよ!」

いや、良くねーよ、お前。人の顔だと思って。

「まったく、目の腫れぐらいまだマシでしょ? あの足に比べりゃ」

足? ああ、足か。確かにな。あれは酷かったからな。最寄のバスケットコートはどこだったかと、要らぬ考えを巡らせてしまったほどだ。

んんん? 足だって?

「そうだよ! 俺の足……っ! ってあれ……?」

「気付くのが遅すぎじゃ」

「鈍いわねぇ」

「にぶいにぶい」

ええいうるさい! 確かに、気付いたら温泉に浸かっていたし、歩いたり走ったりしていたし、今思えばおかしな所は多々あった訳だが。前に訪れた温泉旅館は、全部夢であった訳で、すなわち記憶のままのこの温泉旅館もまた夢である訳だ。
よって、俺が気付かなかったのは俺のせいではなく、この場所が夢の中であるからであって……。

「うるさい。何訳分かんない事言ってんのよ」

……俺もどう着地させたら良いか分からなくなっていた所だ。