車内には先客が居た。
運転席には、女教師とは違うタイプの美人が佇んでいた。

ここでこの女に対して、佇んで居る、と言う表現を用いたのは、この女が纏う独特な雰囲気の為だ。

この女からもまた、そこはかとない上品さの様な物が感じられた。
直感的に、地図に文字を添えたのは、この女ではないか、と思った。

女教師……何つったっけ、名前…。
ああ、佐藤とかって言ったっけ。
どうせ偽名なんだろうが。

その佐藤とは対照的な、腰まで伸びようかと言う長い黒髪のポニーテール。
服の方はサイズ以外の違いは無い様に思う。
制服みたいなもんか。

しかし、乗れってか。
参ったね、両手に花だ。

なんて事を言ってる場合では無い。

乗るか、乗らないか。

まぁこの場合、後者は選択出来ないかな。

こんな状況だ。
逆らっても無理矢理連れて行かれるだろう。
どうせ連れて行かれるなら、気絶させられるとか、眠らされるとかよりも、黙って従っておいた方が得策と思える。
まぁ、何もされない保証なんてのはどこにも無い訳だが。

腹を括るしかあるまい。

そうして後部座席に収まった。