雲をまとった半裸の月が
闇のさなかを泳いでる
長い夜
顔を覆った両手をどければ
この手のひらには
精密に複写された
無表情
悪夢に絶叫する瞬間
宙を掻くこの指先に今は
目立たぬ静けさだけが
塗りたくられてる
指紋を消せないのと一緒
私の触ったあなたの頬に
染み入った雑念と狂気
誰もその滲みに気付かないのは
私を追い出すもくろみが
とうに完遂したからか
まっしぐらに衝突する
救世主
その気配なき存在に立ち止まるのは
自らの弱みを持て余し
半ば崩れかけた茫然の名乗りを否定できない
哀しい一人舞台
夜空を照らす静かな光に目を傷め
欠けた存亡を
忘れ去る
そんなことの繰り返しで
いつまで経っても
満ちずに
足りずに
変わらずに
夜の瞬きはまた
振り出しへと導く灯火
震える燭台で目の高さを照らせば
その希望の灯りで
この呪いの眼球が相殺される
神秘の物語を理解するには眼よりも耳を
耳を頼って
奏でる音は確かに
光の中に
信じたい声を主張する
理想の音色
重厚な和音の旋律に
耳を澄ます
私はあなたと違う景色を描き
あなたは私と違う子守唄を思い出す
聞き慣れないその雑音に
どうか惑わされないで
耳を塞がないで
永久が一瞬を表すこの世界で
いつかまた交わる時には
互いを思い出せるように