放送部担当の先生は荒川雅之(あらかわ まさゆき)先生。普段はあまり眼鏡をかけないからなのか、いつも放送室の机にお聞きっぱなしだ。それにしても…。「度合い、丁度良すぎるんだけど…」

白く、真っ直ぐに続く廊下を、俺たちはのんべんたらりんと歩いていく。足元に花が咲いているわけではないが、どうしても、廊下というものは、ゆっくり歩きたくなってしまう。

「お前、今度っから、それかけて部活行けよ」

うって変わり、智也の視力はまだまだA。これで、勉強も部活も出来るんだから、困りもんだよな。因みに、こいつの首尾位置はキャッチャー。そして、俺はサード。

「そうだな…」

でもなぁ。眼鏡ってなぁーんかズレるんだよ。違うんだよね、俺の感覚とさ。

「でも、俺のウリは動体視力と反射神経だからさ、こんなもんいらないな」

そう。ゲームの状況と敵さんの力さえわかっちゃえば、あとはタイミングの問題。右バッターの振りが早ければ、ラインより内側に構えて、ショートとコンタクトをとり、うまくいけばダブルプレー。もひとつうまくいけば、スピードのあるライナーをノーバンで取って、ファインプレー。左バッターが振り遅れれば、サードのライン上、または内側に強いライナーかゴロが来る。

頭より神経の図太さをアピールするには、このポジションもなかなか悪くない。唯一、穴なのが、なかなかボールが来ないってことだ。1試合でのファーストへの送球は多分、バンド処理が一番多い。

っとまぁ、そんな感じで。

今日も頑張って「いっちょ、行きますか!」

廊下の駆け足競争。足の速さは、実はそんなに差がないのだ。ま、あまり気にはしないけどさ。