響き渡るミートした瞬間の高く、心地よい音。だがボールはかすめて、惜しくもホームランゾーンへは届かなかった。そのままの飛距離からストンとコンクリートへと落ちて行った。
俺はそれを見ている暇はなかった。マシーンは次々とボールを繰り出してくるのだから。

ノンストップだぜ。
スタミナ勝負だぜ。
いや。忍耐力だな。

結果は…。負けた。悔しさの欠片もない。

「なぁ、いい加減、帰ろうぜ。俺の目じゃあ、もう見えねえ」

弱音と共に再びボールは襲いかかって来た。早いってば。

カンッ。
判定はファール。

「なんだぁ。本当に目ぇ悪くなっちゃったのか?」

カキーン。
判定はセンターライナー。

「この前の視力検査っ」

と、ボールがやってきた。思わず言葉が切れるが、集中はボールへ移行する。

すかっ…。
判定は……ストライク。
見事なゴルフスイング。

「…ったく。ラストでボール球かよ。畜生っ!」

バットを元の位置に戻し、個室ルームから出た。それから、相方の方のルーム扉を少し開けて、報告した。

「結果は両方Bだったよ」

ひとつ返事で扉を閉めざるをえなかった。だって、ボールが来ちゃったんだもん。
すぐそばのベンチに腰掛け、相方が出るのを待つ。
あらかじめ買っておいた炭酸ジュースを、俺は勢い良くグイッと飲んだ。←このとき、俺は空気も一緒に吸ってしまった。相変わらずなドジ野郎である。
案の定、むせました。

そんな間にも、相方はパコパコとボールを外へ運んでいった。