その時の気持ちをどう表現すればいいのか、僕は分からなかった。
空は快晴。窓の外には桜が見事に咲いている。
嬉しい。幸せ。これ以上ないくらい良い言葉なのに、表現にはまだ足りない。僕にもっと表現力があれば良かったのに。


不意に肩を叩かれた。
「緊張してるのか?」
英(すぐる)。大学で同じクラスになって一番に出来た友達だ。
「いいや。ちょっと感動して…」
僕は首を振りながら答えた。


今日は僕の結婚式だ。
自宅からそんなに遠くない、小高い丘の教会。お互いの親族とほんの少しの友人。

病めるときも、健やかなるときも死が二人を別つまで…
「誓います。」
自分の声が響く。
「九条萌。誓いますか?」
彼女を見る。
萌は凛とした表情で、とても優しい瞳でゆっくりと手を動かした。
『誓います。』


萌は声が出なかった。

それでも僕は彼女と共に歩みたいと願い、プロポーズした。

例えそれが、永遠に続かない幸せと分かっていても…