「お前、今日、変」


周りの生徒が不審がった目で

私と須藤を見てる。



「いつも変ですってば。

離してください」


それでも、須藤は私の腕を離さない。

真っ直ぐに、力強い目をした眼差しが
私に向けられている。


周りが目に入ってないんだ。



「先生、ここ学校って忘れてない?」


しばらくして、私がそう口にしたら

腑に落ちない感じで

私の腕をゆっくりと開放した。


その反応からして

この状況を把握してはいたみたいだ。


「あんまり溜め込むなよ?」

優しい口調で、
須藤は私の頭に手を置いた。


「あ、うん」


そんな須藤に違和感を抱いて、

素直な返事をしてしまう。



なんか、今日の須藤調子狂うな。

須藤こそ変じゃん。


「ほら、行け!」


須藤は顔を逸らすと、

そのまま門までスタスタと行ってしまった。


周りの生徒のヒソヒソ声が聞こえる。



赤く変色するほど強く掴まれた腕が

ジンジンと痛む。



「おらー!走らんと遅刻だぞー!」


須藤の、

いつもの調子で
余裕をかまして歩いてる生徒に
はっぱをかける声が響いていた。










「ほら、あの子」


「え、うそ、可愛い!ショック〜!」




休み時間。


いつもと違って落ち着かない様子の廊下。



「直弥〜真相は?」


友香里までもがそう言い出す始末。


「だから、何度言わせれば気が済むの」

「だって〜・・・」



ある噂が生徒の間に混乱を招いていた。


あの朝の出来事。

多数の目撃者から広まった

ない事だらけの噂が、

大勢の会話を支配していた。



須藤と私が抱き合っていただとか、

キスしていただとか、

須藤の車で一緒に登校してきただとか、

実は付き合っているだとか。



須藤に密かに想いを寄せる女の子達は

大騒ぎ。



毎時間、こうやって私を見に来るんだ。


後輩から、先輩までもが。