「樺山、2組の梓川が呼んでたぞ。」



放課後、また知らない〝梓川君〟に

呼び出された。


これじゃ中学と変わらない。


外見だけの私。


「今日は予定あるからって言っといて。」


伝言役の男子は、

目を見開いていた。


冷たいかもしれない。

でも同じ事の二の舞は嫌なんだ。



ヒーローが現れるまで、

私はじっと彼を待っていたい。



「樺山!帰りか?」


独特の低く掠れた声。


「須藤・・・・」


私の自転車置き場近くに

たけぼうきを持って

座り込む須藤。


「部活はやらないのかぁ〜?」


「やりません。」


「なんで、樺山、運動得意だろ?」


私が須藤の横を通り過ぎる時、

須藤の目線は私を捕らえ続けていた。


顔だけ後ろに向けている状態。


「自転車出すので、どいてくださいね。」


「部活やろーぜ?陸上部とかどうだ?」


陸上部の顧問って・・・須藤じゃん。


「どいて下さい。」


「一生懸命に汗かいて。青春だぞ?」


「・・・先生、どいて。」


「なにかに夢中になるのは・・・」


「先生!!」


須藤は口を閉じて、

真っ直ぐ私を見た。


その視線の鋭さに

一瞬うろたえる。


「わぁーったよ。」


竹ほうきを支えに

先生は重い腰をあげた。



「ありがとうございます。」


自転車を出して、

さようならを言おうと後ろを向くと

須藤は男子生徒にいじられていた。



楽しそうな笑い声。



私は前を向き直して自転車に跨がった。

寂しい夕暮れの始まり。