「ちーがーう! 空、飛べるかなってヤツ」


「あー、言ったっけ?」


「言ったよ。それさ、出来ると思う?」


「は?」


呆気に取られた顔が可愛い。

とは口にはしない。


「思わない? こうさ、傘広げて風に乗って、ばさっと」


「……ムリじゃないの?」


「そっかなぁ」


「第一危ないっての」


「私は、そうは思わないけど?」


「は?」


言うなり、くるっと向きを変え、来た道の方を向いた。

向かい風が、途端追い風へと変わる。

風が背中をぐいぐいと押してくる。

今にも走り出せと言わんばかりに。



あぁもう。



口がにやけるのを止められない。