なぜか、そんな桜井春とカフェに
来ていた。

私はカフェオレ。
桜井春はココア。

「王子~今日は何の日ですか!」
桜井春は、飲んだ後のココアの髭を
口の周りにつけながら、私の横にある
紙袋のチョコを指差して言った。

知ってますとも。
今日は…
「バレンタインです」
「ですよね。だから、私は、昨日
一生懸命王子のためにチョコを作った
わけです。もえ王子~。でも、さっき
冷めてしまいました。もう、そこにある
私のチョコの愛情は消え去り、ただの
甘い黒いかたまりです」

可愛い顔して、キツイことをハキハキと
言う桜井春。
さっきのキュンキュンピンク色がウソの
ようだ。

私より、数倍クールでかっこいい。

「王子、いや、改め、もえ先輩! 
鞄の中身見せてください」

きゃっ、鋭い。

何、この子。

「野生の女の感をなめたらいかんぜよ」
「わっ、何するの、桜井春~」

私の横にある、学生鞄を奪いとられ
中から地味な紙袋を見つけられてしまった。

「これ、あるじゃないですか」