「あ、桜井さん。チョコレート、ありがとね」
「もえ王子に、ありがとうなんて」
なんたる、モジモジ具合。
じれったい~ったりゃありゃしない。
でも、これが、坂田のタイプなんだな。

「一緒に帰ってもらえますか?」
「え?それは、無理」
「なんでですか?」
「だって、期待に答えられないもん」
「え?」
「わし、こう見えても、男好きなの」
「きゃっ」
なに、なに、なに、真赤になっちゃって。
今にも泣きそうな潤んだ瞳。

ずきゅん。
ずきゅん。
って、なんないってば!!

思わず、ぐるんぐるんと首を振る私。
後ろから、だるい足音。
坂田の音だ。

「やだやだ、もえ王子さま~。そんなこと
言わないで」
その瞬間、桜井春に抱きつかれていた。

「なんでだよ。なんでなんでだよ」
横では、乱暴に自分の靴を地面に投げる坂田。
「なんでなんでだよってこっちが言いたいよ
 坂田~」
「なんで、いっつもお前なんだよ。こっちが
生身の男なんだってば」
わ、わ、わ、顔、赤すぎだよ坂田。
あかさかた~。

桜井春で春うらら。
裏、裏、裏目の春うららです。