今日だって、柄でもないけど
奴に渡そうと、手作りのチョコを
持ってきていた。

いや、柄でもないなどと言えない。

なぜなら、毎年恒例だ。

もう、かれこれ七回目になる。

せっかく二人きりになれたというのに
逆切れに切れて靴箱まで猛ダッシュして
しまった始末。

もう、上履き脱いで、靴履けば帰るしか
ないですよ。もえさん。

「もえ王子~」
茶色の皮靴に右足を入れたときに聞こえた声は
奴ではなく、ピンク色の女の子の声だった。

桜井春だ。
小柄で華奢で色が白い。
ふわふわの顎のラインまでの茶色い髪。
少し甘いシャンプーの香り。
どっからどう見ても女子中の女子だ。
これが、坂田のタイプなんだ。

私と言えば、170センチもある身長。
髪なんか長くしたら余計怖いので、バッサリ
ショート。
冷やかな切れ長の目。
ジャニーズに負けないっくらいのクールな
佇まい。
女にモテるが、男にゃモテないって。
どうよ…。