「近い、近いよ…桜井春」
真っ赤だ。

こんな時に、リトマス試験紙は
素直に反応する。

ふわふわくるりんに変身した
私の効力は木端微塵。

「いいよ、師匠。帰ろう」
「え?先輩。告らなくていいんですか?」
「え?告る?」

ああ…言っちゃった。
もうだめ、死にたい。
「わし、もう無理」
チョコが入った小さなバスケットを坂田に投げて
逃げ出してしまった。

「大嫌い。もえ先輩を泣かす男なんて大嫌い」
「え?桜井春~」

そして、坂田も完全にふられていた。

今日、バレンタインはなぜか私たち三人の
記念すべき失恋記念日になったというわけだ。

私は坂田に。
桜井春は私に。

そして、坂田は桜井春に。

エクステはすぐにはとれず、私は、そのまま
眠ることにした。