ふわふわくるりん。

茶色い髪が顎で揺れる。
こんなの初めて。

「甘い系の王子なんて見たくなかった。
 でも、でも、でもかわいい」
桜井春 否 師匠は横で、ハイテンションだ。

「ほんとほんと、腕がなっちゃうね。
 超、いいじゃん。もえちゃん!つきあってほしい」

ヘアスプレーをフワーとお兄さんがかけてくれた。
あっ、桜井春の甘い香りと一緒である。

こんな、私。
とっても恥ずかしい。

「わし、こんなのなんか、なんか」
「わし NGです。先輩。師匠命令!私ぃとちょっと甘く
 可愛い感じで言うべし」
「言えるか!」
「言えるか!じゃないです。さあ、行きますよ」

くるくるとまわる椅子を出口の側に、曲がれ右。
桜井春に手を引かれて店を飛び出すと、可愛い
雑貨屋さんに連れていかれた。

「どういうこと?」
「さっき、私が包み紙をはがしちゃったから。
 しかも、これ地味ですよ」
「どうも、すみません」

なによ、にくたらしい。
そんな私の気持ちも余所に、桜井春は籐でできた
かわいいバスケットとリボンを購入して、私の
手作りチョコをそこに入れ替えた。

見違えるほど、キュートに生まれ変わったチョコ。

ふわふわくるりん。
私の髪にあっている。