ーーあの時…大人になりかけた…柔らかく膨らんだアタシの胸にマアの掌をあてたんだよね…





「アタシの心臓の音…感じる…アタシ…生きてる」



「生きてるよ…しっかり真琴の心臓の鼓動を感じる。」



「…しあわせって何かな…ねえ…マア兄」



「そうだな…そんなこと…解らないよ。俺にも。…お袋を死なせて…親も…肉親も…お金も…信用も…生きる意味も…全て無くして…ここに来て…俺は真琴に会った。

そして…真琴といれる時間だけが俺にとってしあわせみたいな気がしてた。

普段…気付かない何でもない普通のこと…

自分を分かってくれる人が傍にいてくれる…それがしあわせなのかな。」



「じゃ…アタシ今…しあわせなんだね。お父さんもお母さんもお家も…なくしちゃったけど…

アタシのこと…一番分かってくれて…大切にしてくれるマア兄がいるから。」



「さあ…どうかな俺は真琴のために何一つしてあげられてないけど…俺はしあわせだよ。」



「アタシ…マア兄の娘…それとも奥さん」



「普通は娘だろ。」



「普通は」



「だって考えてもみろよ…俺と真琴って30も違うんだぞ。普通…娘だろ。」