「やっぱり、緊張しちゃいますね」


彼女は少し困った顔で笑って、俺を真っ直ぐに見つめた。


これって結婚生活、最初で最後の浮気になるのか?


ドキドキと音を立てる心臓とは裏腹に、冷静にそんな事を思う俺がいた。


彼女に対する気持ちは嘘じゃない。


でも、嫁に対する気持ちも嘘じゃない。


この関係は、彼女が結婚しても続くのだろうか?


それとも今日で終わってしまうのだろうか?


分からない。


分からないけれど。


彼女をこの腕に包む日を願って。


彼女との未来があったならと。


今、この瞬間も。


彼女にこんなにも、胸を焦がされている事は真実。


だからこそ。


本当はここへは来てはいけなかったんだ。