「……梢?」
不思議そうにあたしの名前を呼ぶ声も、
右から左へ通り過ぎてしまう。
それくらい今の一瞬の出来事が、
あたしには大きいな事だったんだ。
確かに喋りかけるなって言われてたから、
目が合えば逸らされるんだろうけど。
でも、実際されちゃうとショックは大きくて。
かなりのダメージなんだけどな……。
こんな事を思ってるのは、どうせ……あたしだけなんだよね。
「梢?」
「え? あ、あー、真山君。そろそろ集合時間なんじゃない?」
「え? あー、本当だ」
タイミングよく、集合の合図がかかりホッと胸を撫で下ろした。
このまま真山君に突っ込んで聞かれていたら、ポロッと言っちゃったかもしんない。
あたしは大人で、
しかも仕事として、
ココに来ているんだから、
しっかりしなきゃ。
そう気合を入れ直して、バスへと戻った。