「ちょ…っ、そこの女子!」
慌てて声をかけた俺に
どうやら自分のことだと思っていないらしいそいつは
相変わらず楽しげに歩き続ける。
「おい…って!」
俺はそいつの腕を掴んで
自らの傘に入れた。
勢いよく振り向いたそいつは
いきなりのことに驚いたらしく
大きく目を見開いている。
見たことない顔。
でも、胸元に付いている校章の色は
俺の学年…?
って、今はそれじゃねぇな。
「お前な、傘させよ?
風邪ひくだろ??」
な?と首を傾げた俺に
そいつはキョトンとして
それからクスっと笑った。
「風邪なんてひかないよ?
あたし元気だし!」
「そういう問題じゃ「雨が好きなの!」
呆れてものを言おうとした俺に
被った声は想定外で。
「雨、大好きなの!」
そいつは満面の笑みでそういうと
「あ、おいっ!」
俺の傘から抜け出して走って行った。