「七瀬っちおはよう〜」


「おはよう先生」



職場に着いて車から下りた俺に

あちこちから聞こえてくるあいさつ。



だけど今日の挨拶は

どれもあまり元気がない。



きっと、雨のせいだろう。


「おはよ!

元気ねぇなぁ〜」



俺は一人一人にそんな返事を返しながら

職員室への道を歩む。




「ちょ―!!

七瀬ー!!」


ぐいっと腕を引っ張られ

さしていた傘を落としそうになった。


振り向くと

俺のクラスの女子生徒たち。




「見てこれ!

雨のせいでさぁ〜」


そう言う彼女たちは全身びしょ濡れ。


「あーあー…

風邪引くぞ?」


自転車通学なのを気の毒に思いながら

俺は鞄からタオルを取り出し

一人に渡した。



「わ!

七瀬ありがとう!!

今度返すでねっ」



彼女たちは助かったと言わんばかりの顔をして

昇降口まで走って行った。