こういうとき、「いません」というような答え方をしてはいけない。
 まるでさっきまで一緒だったかのような印象を与えてしまう。
 事実、そうだったとしてもだ。
 
 三沢は、納得のいかない表情を崩さない。
 それはそうだろう。
 さっきは鍵がかかっていた部屋が開いていて、生徒が一人でいるのだから。

 三沢は、ゆっくりと室内を横切り、私のほうへと近づいた。
 私の心拍数は上がるが、表には出さず、むしろにっこりと三沢を見上げた。
「どうしたんですか?」