田中が戻ってきただけかもしれない、という私の期待もむなしく、現れたのは三沢だった。
 夕闇が彼の長身に陰影をつけ、くっきりとしたシルエットを作り出す。
 彼は、窓際にいる私の姿をとらえ、怪訝そうな顔をする。

「・・・・・・日野?」
「・・・・・・はい」
 遅れて、私も返事をする。
 三沢の切れ長の瞳がゆっくりと室内を見渡し、再び視線が私に戻る。
「田中先生は?」
「私一人ですけど」
 間髪いれずに私は答える。