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 HRが終わって、1時間目のチャイムが鳴った。
 
 わたしは机の中から古文の教科書を取り出した。
 平家物語の訳に、夕べは夜中までかかってしまった。
 けど、古文の先生は必ず訳を当てるから、予習は必要だった。
 答えられなくて、恥ずかしい思いをするよりは、寝不足をがまんした方がいい。
 ガラッと教室のドアが開き、入ってきた先生を見て、わたしは、えっ、と小さく声を上げた。

 三沢先生。

 現国の三沢先生だった。