私は彼女が嫌いです。

 そう書いてやればよかった、あのアンケート。
 担任の田中の顔を思い出し、私は鼻で笑った。

「何? 何がおかしいの、ナオ?」
 となりにいる智子が、不思議そうに首を傾げる。
 その顔も、まぬけな金魚を連想させて、私は吹き出しそうになった。
「ごめん、なんでもない。思い出し笑い」
「ふう~ん。なんかいいことあったんだ?」
 いいなあ、ナオは美人だし、と智子は付け足す。
 美人といいことが何の関係があるのか私には分からないけれど、きっと智子の住む金魚の世界では、大変重要な結びつきがあるのだろう。