「すみません。私…何も覚えてなくて」
他人のように振る舞われ、なんだか気分が悪かった。
でも、それは仕方がないことで。
だって美優は目が見えなければ、
記憶もない。
そんな中で俺のことを覚えているはずもなくて。
分かってる。
分かってるけど…だけど、どうしようもなく悲しかった。
いつもいつも俺の横で笑ってるのが美優で。
こんなまじめな顔してるのは美優じゃない。
まるで俺は何かに取り憑かれたかのように今、目の前にいるのが美優じゃないと思いこもうとしていた。
「優作さん…でしたっけ?」
何も言わない俺に美優は声をかえる。
「私は…どういう人でしたか?
優作さんとはどんな関係だったんですか?
昔のこと聞けば、何か思い出せるかもしれないと思うんです。
だから…教えてください」
美優はゆっくりと頭を下げた。