奈々はエレベーターに乗り込み、5階のボタンを押す。
どうやら奈々もこの病院は初めてらしい。
エレベーターまで来るのに少し迷ってたから。
でも、初めてこの病院に来て、俺に会ってほしい人って…?
ますます分からなくなった。
「優作さん。
心構え、いいですか?
何があっても逃げないでくださいよ」
俺同様、奈々も緊張しているのか震える声でそう言った。
俺が緊張するのは分かるけど、なんで奈々も緊張してるんだ…?
また、疑問が増える。
【510】
その病室の前で奈々は足を止めた。
俺は部屋の番号の下に書いてある名前に目を奪われる。
【高崎 美優】
え…?
ちょっと待てよ…
これって…まさか…あの、美優?
『奈々、説明して』
少し口調が厳しくなる。
そして鼓動が激しく波打つ。
奈々は一瞬俺のほうを見たが、何も言わずノックをすると病室に入って行ってしまった。