「公に発表するのは初めてになります。
私の息子で萩乃宮財閥次期当主。

大和です。」



会場の視線が一気に彼に集まった


彼は参加者に向かって丁寧に頭を下げる



「大和。
こちらにきて皆様に挨拶をしなさい。」



彼は私を振り返った



「君も一緒だ。鈴。」



え!?


名前…どうして?


「ちょっ?!」



焦る私の腕を引っ張って
彼は
ステージへ上がった



「はじめまして。萩乃宮大和です。
事情がありまして素顔で皆様にご挨拶できないことをお許しください。」


何百人という有名企業や各界の重要人物を前に

臆することなくスピーチしていく大和さん

私は隣で石のように固まっていた


「ここで、私から皆様に紹介したい女性がいます。」

まさか…

嫌な予感がして
後ずさろうとした体にしっかりと回された腕


「私の婚約者の平瀬鈴さんです。」




はぁぁぁぁぁ??!


会場に沸き起こるざわめきと私に注がれる視線




一気に冷や汗が溢れだし
鳥肌がたった


「な、なにいってるんですか!?」


耳打ちする私に大和さんは得意気に微笑んだ


「おやじからは君も承諾したと聞いたけど?」



承諾したぁぁ?


最終的な判断は私に任せるんじゃないの!?


後ろに下がった蔵之助さんを睨む



蔵之助さんはそ知らぬ顔で微笑む



もぉぉ!!
狸オヤジぃ!!!


「さ、鈴。
皆様に挨拶を。」


向けられたマイク
注がれる視線


思わずドレスを握る手に力が入った


「は、はじめまして…。
平瀬鈴です。」


私はそれだけ言って
マイクを大和さんに返した