壁にもたれ掛かってフロアを見る


まるで

別世界だ



中世ヨーロッパみたい

映画とかで見るようなきらびやかな世界



主人公は胸を弾ませ素敵なパートナーと踊り明かす


なのに
私は目の前の光景に圧倒されて動けない

私の
“素敵なパートナー”



浮かんだのは

犬居さんの顔



でも…


彼はいない



私は一人ぼっち…



「どうしてそんなに悲しそうなの?」



突然声がして
顔をあげる



目の前には
グレーのタキシードを着た赤毛の男の人


顔は上半分が仮面に隠れていてよく分からないけど…
瞳はタキシードと同じ濃いグレー



「パーティーが始まる前から壁の華になるのは勿体無いよ。」



差し出されたのは
シャンパングラス


そして
注がれる金色のシャンパン


「誰ですか?」


知り合いなんていないから逆にここまでされると


気持ち悪い