「そんなに怖い顔しないでよ。」

矢倉くんが大袈裟にため息をはく


「私は矢倉くんと遊ぶために来た訳じゃない。
お父さんの事を聞くために来たの。話すつもりがないなら帰る!」


痺れを切らした私が席を立とうとした時だった

スーツ姿の男が数人私たちの座るテーブルを囲んだ


「!?」


驚いて矢倉くんを見る私

彼はニヤリと笑って私にウインクする


「こいつらは家のSPだよ。せっかく二人きりになれたんだ…
そう簡単には…帰さないよ?平瀬さん?」


それは
玩具を手に入れた幼い子供のように無邪気で悪意の溢れる笑顔…


「まさか…お父さんの事を知ってるって話しは…?」


「もちろんそれは本当だよ。ただここで話すのはもったいないなぁ。

一緒にディナーでも食べながらゆっくり話そうか?

夜は…まだまだ長いんだしね。」



ハメられた…!


矢倉くんの目的は端から私だったの!?


必死で頭を回転させても

展開の早さに付いていけない


鼻唄混じりに私の手を取って歩く矢倉くん


そして
私たちを取り囲むSP…


逃げられない…


ここまで来たら
お父さんの話を聞くまで…
逃げられない