頭がモヤモヤして渦巻く



“コンコン”


軽快なノックが私を現実に引き戻す


「は、はい!」


慌て紙を隠した


「犬居です。失礼いたします。」



香り立つコーヒーとラズベリーパイが乗ったカートを押しながら犬居さんが入ってきた



「本日は体調でも優れないんですか?」



カップを置きながら
パイを切り分け

犬居さんが流れるように手を動かして言う


「え?そんなことないですけど。」


やばいっ!


顔に出てたかな
犬居さんは勘が鋭いからな

「大学から戻られてから、ずっとため息しか付いておられませんし。今もどこかよそよそしいので…気になりまして。

余計な詮索でした。お忘れください。」


犬居さんは深く追求をしなかった


それがありがたいような
寂しいような


誰かに相談できたら楽なのかな?




でも



今までどんなに悩んでも
辛くても


一人で耐えて乗り越えてきた


だから
こういうときはどうやって人に頼ったらいいかわからないんだ



カップの漆黒のコーヒーに真っ白なミルクが渦巻く


はぁ…