空へ、舞い上がる。

サンダルが、脱げる。

重力から、解放される。

次の瞬間、激突する。
地面に。
わたしは転んでいた。

アスファルトに
頬をつけている。
2メートル向こうに、
わたしのサンダル。
切れてしまっている。
履いていたサンダルが壊れて、
わたしは投げ出されたのだ。

車道の側に、
赤い車が停車している。
知らない男が顔を出す。

「血が出てるよ」

わたしは自分の身体を見回す。
すっかり汚れている。
ひざ、
てのひら、
すりきれていた。

「あと、おでこも」

知らない男は、
指差して
教えてくれる。

知ってるよ。
口には出さなかったけど、
わたしは思った。
自分では見えないのに、
知ってる。
そのくらい調子がよかったのに。

わたしは、
すこし不機嫌になっている。
この男のせいではないのに、
転んだ責任を、
押しつけようとしている。
この男が出現しなかったら、
わたしはあのまま
空中を泳いでいけたのだと、
根拠なく思っている。

きっとそのとき、
わたしは無表情だった。
男は、わたしの顔を、
不思議そうに眺めてる。