『カレー』


辛口が食べたかったけど

無愛想なオヤジは

寸胴鍋の中をかきまわしているし

そもそも屋台には

その寸胴鍋しか置いてないから

辛口はないのだろうと思って

宇宙が入ったままのカレー

器を持ったまま

屋台からはなれたら

屋台は光速で、街中を走りぬけた

とりのこされたまま

器の中のカレーを見てみると

ほのかに香辛料の香り

思わず指につけてなめると

舌と喉が焼けるように痛い

そうかあの無愛想なオヤジは

過去から未来に

あの宇宙と一緒に

隠し味と一緒に未来へ

行ってしまったのか