「もう元の世界へお戻り下さい。慈さんは大丈夫です。

そろそろ警察の方々が来そうですし。ミナさんに周りの方々、エイリさんをお願いします」

「まだ諦めたわけじゃないからな」

「エイリさん。今はバカにされていても、理解される日は来ます。

私達過去の人間も貴方が苦しまないように致します。だからもう破滅を望まないで下さい」


ふっと消えたエイリ達。志那のその言葉を聞いていたのかは定かではない。


「大丈夫です。私達が変われば苦しみは減ります」





「ねえ、ミナ。やっぱり無理だったよ。折角偽物の本を作ったのにね」


エイリが苦笑交じりでミナに言った。彼女は“歴史は簡単には変えられませんね”と呟いた。

それに彼は同意し、犯罪者として捕まる事を恐れた。

世界が破滅を迎えればそうなる事もなかったからである。しかしミナはこう言った。


「大丈夫ですよ。歴史を変える切欠だけですから。切欠を生かすも殺すもあの世界次第です。

だから直接変えた事はなりませんよ。ワタシ、本当は貴方に世界を壊して欲しくありませんでした。

言わなかったのは貴方を裏切ってしまうと思いまして。だから安心しています」


エイリが笑った。


「頼むよ、同じ“坂見”として。スワンの方もね」