首を傾げる2人。話が全く見えていなかったのだった。由は若干焦っている様子。

間もなくしてだった。人の悲鳴が聞こえてきたのは。何かを知っている由は青い顔をしていた。

周はその声のする方へと向かった。慈は乗り気ではなかったが、強引に連れて行かれた。

腕を引っ張られながらも、慈は変な胸騒ぎを感じていた。

その方向には育った施設のある場所だったからだ。杞憂に終わって欲しいと願っていた慈。

しかしそれは叶わなかった。その悲鳴を聞いてやって来ただろう野次馬。

その野次馬は施設に群がっていたのだった。周囲では救急車や救世の人間、警察を呼べと叫んでいた。

2人はそんな野次馬を掻き分けて、施設の中へと入っていった。


『幼稚園かと思ったけど、孤児院だったのね……』


既に到着していた由はそう呟いた。慰めようとしても慰める事が出来ず、哀しんでいるようにも見えた。

そこでは子供が数人涙を流して泣いていた。職員と思われる人間や、中学生以上の子供が慰めている。

それ以上に、慈の目を焼き付けたのは……