「あ、慈ちゃん」


帰り道、面倒な人間に出会ってしまった。真っ直ぐ帰りたいのに。

どうしてこうも俺には運と言う物がないのだろうか?最悪だ。


「珍しいね、そんな黒尽くめな格好。何処か行っていたの?」

「…………関係ない」

「そりゃ、そうだけど……さ。気になるんだもん」

「墓参り。じゃ、用は済んだだろ? じゃあな」


まだ聞き足りないのか、周は俺を引き止めようとする。お願いだから帰らせてくれないか。

大体周自身、こんな所にいると言う事は何か用がある筈だ。こんな事をしていてはまずいのではないか?


「大丈夫!用事はもう済んだから。慈ちゃんだってこの後どうせ用もないでしょ?少しお茶しない?」


たまに思う。こいつは何処かで俺の心を読んでいるんじゃないかと。

思っている事が分かるのか、それに関する答えをすぐに言って来る時があるから。

結局強引に連れ出されてしまった。俺がこんな人間じゃなかったら、絶対に知り合いにしたくない。


「お墓参りって、慈ちゃんって身寄りいないんじゃなかったっけ?」

「……そこまで何で詮索するんだ」

「気になるからだよ。駄目?」

「言う必要が感じられない」