思い出して泣いてしまったと言う事か。そんな事本当にあるものなんだな。


「で、休憩中なのか終わったのかどっちだ?」

「休憩中」


面倒だったが仕方がない。部屋の内線を使って言ってやった。

“秋村は体調崩したから切り上げさせてもらう”と。色々具合とか聞かれたからそれも適当にあしらった。

周本人は少し驚いた表情を浮かべていた。


「その変な顔を客に見せる気かよ?」

「し、失礼ね…………!」


だんだん周らしさが戻って来た気がする。それはそれで五月蝿くなるから困る気もしたが。

五月蝿くなるのが嫌で、出て行こうともしたがやはりやめた。周だって女だし。今1人になるのはきっと辛い。

何で変な所で“泣いている女を1人にするな”と言う言葉を思い出してしまったのだろう。

早くそんな事を忘れてしまおうと、適当にテレビをつけた。映し出されたのは、ドラマの再放送。


『もし僕が死んだら、僕の心を君に託すよ。もし世界に終わりが来て、僕が先に死んでもそれは同じ』


何てベタな台詞なのだろう?すると周は自分が言われたかのように凄く嬉しそうな表情だ。

“夢の中で言われた言葉がこんな物だったら良いのに”と。そして続けてこう言った。


「慈ちゃんもこんな事を言えるくらい良い男になってほしいなあ……」