担当の人間に急用が入ってしまったからだそうだ。それなら延期でも良かったのに。

漸く周が落ち着いた頃、事情を聞く事にした。何でそんなに泣いていたのかを。

泣いている理由なんてどうでも良かったが、どうせ周が何で突っ込まないの?と言ってきそうだったから。


「思い出したの」

「何をだよ」

「昨日の夜に見た夢」

「夢かよ」


“夢で悪い?”と言われたが返さなかった。……にしても、聞いてがっかりした。

泣いていた理由が昨日見た夢を思い出したからだなんて。

すると周は頼んでもいないのにその詳細を言い始めた。止めるのも面倒だったから聞いてやる事にした。


「大好きな人がいるの。一方的な片思いなんだけどね。その人が夢に出てきたの。

だから私は想いを告げた。するとね、その人は自分もずっと好きだった……って抱き締めてくれた。

凄く嬉しくてたまらなかったの。だけどその人は血を吐いた。すぐに死んでしまう病気でね。

あ、実際はどうかのかは分からないよ? 何処にも行って欲しくないと不覚にも泣いて……

そんな私に彼は何かを言ってくれたんだけど……そこで目が覚めたって訳」

「泣く理由が見えてこないが……」

「さっき受付をしていたらその人そっくりのお客さんが来たの。そしたら夢の事思い出しちゃって……」