『それで、ね。病院で弾いてもらいたいってお願いがあったの。勿論、タダの。

嬉しくて、学校から帰れば毎日練習していたわ。その日も練習の為に家に帰ろうとした。なのに、さ……』


少し表情が曇っている。きっとこの後何かがあったのだろう。哀しい出来事が。


『あろう事か、階段から足を滑らせてね。気付いた時には眠る私と、哀しむ家族の姿があった』


階段から落ちて死ぬなんてバカみたいだよね、と苦笑していた。

そんな事ないです、と周は言っていた。俺は別にどうでも良かった。

何故破滅を望むかだけが知りたい事だから。


『これが運命だって言うならその運命を決めた神様、そしてこの世界が憎いわ』


漸く聞けた。恨んでいる理由を。恨んでいると同時に未練があって成仏出来ないと言う訳か。


「でも由さん。どうしてこんな所にいるんですか?」

『誰にも邪魔されずにピアノが弾けるからよ。此処を見付けたのは本当に偶然だったわ』

「…………」

何か、矛盾しているように聞こえるのは気のせいか?

皆に金を取らずに聞かせたい。だけど邪魔されずに弾けると言う理由で此処にした。

よく分からん。どうしてなのかさっぱりだ。