ある日の事だ。


「休みだからとっておきの場所に出掛けようか」


助手みたいな形で俺と共に行動をする人間、秋村周(あきむら・しゅう)から電話が来たのは。

一体何処へ出掛けるというのか。連れて来られたのは町外れの廃墟。


「何、此処?」

「慈ちゃん知らないの? 此処、お化けが有名な所なんだよ? 探検には持って来いだよ」

「探検……? 興味ない。信じる方がバカらしい」


たかがそれだけの為に?しかも今はまだ昼間だぞ?幽霊なんて出るのか?

それだけなら帰ろう。そう思って無言で帰ろうとした。なのに。


「慈ちゃん。私は君の顔が恐怖の顔に引き攣るのが楽しみで誘ったんじゃないよ?

それに此処まで来たら引き下がれないって。さあ、行こ。女の子1人にするなんて情けないよ?」


成る程、こいつは俺のそういった表情を見たくて誘った訳か。別に俺は情けなくて結構だ。

それでも強引に俺の腕を引っ張る周。力を使ってやろうかと思ったが、それは許されない事。

私情で使って大事になったら大変だし、この周みたいな“使い”に力は効かない。

結局付き合わされる羽目となってしまった。最悪だ。

すると周は元気よく“お邪魔しまーす”と脆くなっているその扉を開けた。……誰もいないのにお邪魔します?

割れたガラス窓。そこから射し込む光は眩しかった。写真で見るような廃墟の写真とはまた違う気がする。