俺の初めての仕事は監獄だった。連続殺人犯やら前科有りの囚人、死刑囚。

様々な囚人がいる所。数ある中でも主に罪の重い人間が収容されている場所でも有名だった。

そこで痛みを分けた。刺殺した奴には刺した痛み、焼き殺した奴には焼かれる熱さを。

殺人以外の再犯者には心の痛みを。与えられる前は本当に態度が悪かったのに、

与えた途端に苦しみ出して俺に助けてと縋って来る。それを刑務官が止めていた。

それをするのは被害者が死ぬ時の痛みを分ければ再犯も減るだろう、という警察の試みらしい。

実際に減ったのかが分かるのは数年先の話だ。

重犯罪者の後は軽犯罪者と未成年犯罪者の所。週に2度、主に土日はこの仕事。

仕事で貰える報奨は桁違い。一体何時から日本はこんなに金持ちになったんだ?どうでも良いか。


この仕事が俺にとって“日常化”してしまった頃。ある女と出会った。

たった数分だけしか顔を合わせなかったし、2度と出会う事もないその女。


「君も私達みたいだね」


ひどく印象的だった。罪を犯した人間に思えないほど、とても柔らかい空気を持っていた。

でも仕事は仕事。面倒だがこの女にも痛みを渡さないといけない。