こんな言い方はご本人に悪いかと思いますが、意外にもしっかりなされている方だと思いました。

もしこの力に頼られたら、私は多分この方に怒鳴りつけていたかもしれません。

少し間が開いたかと思えば、市瀬さんはお兄さんへ対する思いを語り出しました。


「何時最期の時が来ても良いように、出来るだけ傍にいたい。

お兄ちゃんにとってのラストダンスの相手は私であって欲しいから」

「ラストダンス、ですか?」

「うん。最期の幸せな一時は一緒にいたいの。終わる頃には、

永遠の別れを哀しむ涙なんて流れない位のラストダンスを踊って、

私にとってもお兄ちゃんにとっても後悔のない一時で終わらせたい」

「素敵、ですね」

「でもまだ先の話よ?お兄ちゃんはまだ生きてるから。急変しない限りはね」


くすっと笑い、彼女はこう言いました。


「貴女にもきっといるよ。貴女とラストダンスを共にして欲しい相手。

終わる頃には哀しい涙は出ないくらいのね。きっと互いに満足する事が出来る、そんな踊りが踊れるよ」