「言われたの。“お前に出来る事は眠る兄の傍にいる事”ってね」


……と言う事は、あの病室にいらっしゃるのはこの方のお兄さんなのですか。

まだお話は続きました。まるで誰にも言えなかった事を全て吐き出すかのように。

でも何故でしょう?本当に見ず知らずの私にこんな事を言うなんて。


「どうして私にそれを?」

「君は何と言うか……彼に似ているから。何でも言えそうな気がしたの」

「彼?」

「牢にいた時に出会った男の子、かな。あまり深くは言えないけど」


……一般の面会者でしょうか?いえ、もしかして破滅の方かもしれません。

深くは言えないと言う事は、言ったら何か大変な事があるからでしょう。

そのような人物はこの世界に2人しかいません。私と破滅の方です。


「えっと、その……市瀬さんは救世の方にすがると言う事はなさらないのですか?」

「どうして名前を?」

「ネームプレートです。兄妹なら同じ苗字かと思いまして……違いました?」

「ううん、違わない。市瀬であっているよ。それで質問だっけ?

私は誰の願いがあっても、力には頼らないよ。神様は苦手だから。

それに、それは最終手段。まだ目覚めないと決まった訳じゃない。奇跡を待っているの」