「栗井さん、でしたね。何故この方は良いと判断したのです?」

「強いて言うならば熱心さ。研究所に押しかけたり電話をする人間はいるけど、

彼のように諦め悪い人間は初めてだ。大抵は諦めるんだけどね」


朔斗さんは少しだけ照れ臭そうな表情を浮かべました。

まるで“そこまで言わなくても”と言わんばかりでした。


「それで、何故お姉さんを?」

「Rinsa(リンサ)って歌手知ってるか?」

「Rinsaさん……あ、最近人気が出始めた方ですよね?」

「それ、俺の姉」


吃驚しました。彼のお姉さんがそんなに有名な方だったなんて。

ですがまだ話が見えません。一体私の力を何処で使えば良いのでしょうか?


「3年前、姉はオーディションに受かって念願の歌手になる事が出来た。

それから努力を重ねて徐々に売れてきたのが1年前。夢が更に大きくなる筈だった。

だけど半年前に突然声が出なくなってな……

医者には半年治療を続けても駄目だったら、もう絶望的だと。丁度半年を向かえたのが最近」

「それで、治療の結果は……?」

「上手くいっていたらこんな頼み事はしないさ」

「ごめんなさい。そうですよね……ですが、Rinsaさんは今も活動を続けいらっしゃりますよね?

先月にもCDを出されていましたし……」