突然現れたのはスーツ姿の男の人。きっと上部の人でしょう。

何故このようなお方が朔斗さんの事を知っているのでしょう?


「どうぞこちらへ……と、貴女もいらっしゃったのですか。失礼しました」


訳の分からないまま、上部の方は跪いて私の手の甲にキスをしました。

更に混乱しました。人前でこんな事をされるなんて思ってもいませんでしたから。

そして気付いた時には朔斗さんもいなくなってしまいました。一体何だったのでしょう?


「来なくても良いって言ったけど、やっぱり来たんだね」


苦笑い交じりで驚いた様子の南雲さん。きっと私も苦笑いをしていた事でしょう。

ちゃんと理由を告げましたら、志那らしいと笑って下さりました。

それから私は南雲さんのお手伝いをし、定期検診の為に別の部屋へ行きました。

検診から戻ってきた時、南雲さんが待ってましたと言わんばかりの表情でした。


「何かありました?」

「志那、3階の第一応接室って分かる?そこに至急向かってくれないか?」

「……?分かり、ました」


何故、そして誰が私を呼んだのかは分かりません。

聞こうとしても南雲さんは良いから早くと言っているだけでした。

急いでいるようだったので迷惑かとも思いましたが、走って行きました。

ちゃんと“第一応接室”と書かれているのを確認し、ノックをして入りました。

そこにいたのは受付で出会った上部の方と……