苦笑をしながらそう言うと、蒼一さんは紙切れを渡して下さいました。そこには住所が書かれていました。


「これは何でしょう?」

「俺の住所。手紙のやり取り、したくって。駄目?」

「いいえ、喜んでお受け致します」


ですが困りました。私の住所をお教えしたいのに書けるような物を持っていません。

その事を告げますと、蒼一さんは纏めた荷物から便箋とシャープペンを取り出しました。


「これに書けよ」

「分かりました」


丁寧に書きそれを渡しました。俺から書くな、と笑顔で言って下さいました。

しばし談笑をしていますと、遂にお別れのときがやってきました。

手紙でもやり取りは出来ますし、会おうと思えば会う事も出来ます。ですが別れは寂しいです。


「そうだ。志那、知っていたか?この病院に今話題の救世の力を持った人が来たんだよ」

「そうなのですか?それは知りませんでした」

「ああ、実は俺にもその力を使ってもらったらどうかって聞かれたんだ。だけどやめた。

ゲームとかでもあるだろ?癒す代わりに命を削るって。あれだったら可哀相だなって思ったんだ」