佐藤さんは団地の三階に親子三人で暮らしていた。

ある日の夕食後、ママが台所で後片付けをしている間、七歳になるマナミはパパと一緒にテレビの動物番組を見ていた。

「ねえパパ、キリン飼いたい」

ブラウン管に映る愛らしい野生動物に夢中になっているマナミに、パパは頭をボリボリ掻きながら、

「キリンは無理だから、パパの抜け毛で我慢したまえ」

手のひらにこびりついた抜け毛を差し出した。