「最低なのは、どっちだ?男の気持ちを利用して、傷つけるだけ傷つけて。その上、自分の過ちを叱ってくれた人に対して最低だ?それはないんじゃないか?」



孝幸の言う通りだよ。


確かに手あげた事はよくないけど、言葉で伝わらない時、相手の痛みに気づかない時、頬をうたれた痛みとともに、少しでも分かるかもしれない。



「瑠美ちゃん。」



店長は瑠美さんを自分の胸に引き寄せ、ぐっと抱き締めた。



「何するのよ。離しッ・・・・」


「無理。嫌がっても離さない。」


「なに言って・・・・」



逃れようともがく瑠美さんを、ビクともせずに抱き締め続ける店長。



私と孝幸は、それを黙ってみていた。

少し心配になった私は、隣の孝幸をそっと見上げた。



すると孝幸は何も言わず、ただ少し微笑んだ。


大丈夫。あとは、店長が解決に導いてくれる。


きっとそういうことかな?



そっと店長の顔を覗きみると、それは伝わってきた。


もう迷わない、いつもよりももっと優しい頼りたくなるような表情・・・