車はシュウの居場所から次第に遠ざかるが、あたしもジルも、言葉を交わすことはなかった。


世界はすっかり真っ暗闇で、外灯のひとつも見当たらない。


ただ、どちらからともなく手を繋いでいた。


ジルはどんな想いで、先ほどの話を黙って聞いていたのだろう。


シュウが死んだら、あたしもジルと同じになるのだろうか。



「ねぇ。」


「ん?」


「知ってたの?」


「…何が?」


「シュウがあそこに居たの。」


ジルは、何も言わなかった。


それでもあたしはありがとう、と言った。


ジルが居なきゃ、こんな再会はありえなかったことだけは確かだから。


そしてジルが居なきゃ、あたしはあんなにも冷静で居られなかったかもしれないから。


だからもう一度、ありがとね、と言った。


それと同時に、もうお互いの関係を繋ぎ止める術がなくなったのだと知る。


ただのセフレには、きっと戻れないだろう。



「…帰りたくねぇな。」


ポツリと落とされたそんな台詞が、スローバラードに静かに溶けた。


人間は欲張りで、大事なものをひとつに絞れないらしい。


結局、そうだね、と返すことしか出来なかった。