「これからどうするか決めたら、連絡ちょうだい。
今度こそ、逃げたら許さないから。」


「…姉、ちゃん?」


「ちゃんと決まるまで、親には黙っててあげる。
ただ、周りの人のこと考えて結論出して?」


そう言って名刺を差し出すと、少し迷いながらも彼は、それを受け取った。


健康的な肌の色も何もかも、病人だとは思えないほどだ。



「…お店?」


「キャバだよ、ただの。」


今度ゆっくり話そう、とあたしは付け加えた。


もう、シュウの所為で、と思う気持ちは消えていて、ただ、今までどんな風に過ごしていたのを知りたくなっている自分が居たんだ。


そして、明日もちゃんと生きていてほしい、と思う。



「…連絡、ちゃんとするから。」


「待ってるよ。」


「うん、ありがとう。
ホント、姉ちゃんには昔からそれしか言えない。」


「良いよ、今度土下座してもらうからさ。」


笑うと、シュウは苦笑いを浮かべていた。


2年前まではいつも見ていた顔だと思いながら、忘れかけていた頃を思い出す。



「あたしは何があってもアンタの“お姉ちゃん”だから。」


そして、大将とおかみさんに頭を下げた。



「弟のこと、お願いします。」


もしかしたらあたしは、連れ戻す気なんてないのかもしれないな、と思うような言葉が、自然と口から漏れていた。


まだ戸惑ったような顔に、答えは聞かずにきびすを返すと、ジルも何も言わずにあたしの後ろに続いた。


シュウにはシュウの、あたしにはあたしの、解決すべきことがあるのだから。