「…シュウ、これは一体…」


やっと、戸惑うような声色で、おかみさんが口を開いた。


ハッとしたようにシュウはそちらを一瞥し、唇を噛み締める。


突然すぎて頭の中も心の中もめちゃくちゃで、ジルだけが、こんな状況でため息を吐き出している。



「座れ。」


そんな、誰に言っているかもわからないような低い命令口調に、自然とあたしは涙を拭って呼吸を落ち着けた。


シュウもまた、こちらへと足を進めてきて、少し離れた場所へと腰を降ろす。



「みんな、アンタのこと心配してた。」


静かにあたしは、口を開いた。


またシュウは唇を噛み締め、悔しそうに漏らす。



「…明日生きてる保証もないんだよ。
姉ちゃんに俺の気持ちなんかわかんないし、もう放っといてよっ…」


それは、身勝手なだけの台詞なのかもしれない。


それでも、人の気持ちなんて他人には到底測れるわけがない。


両親の気持ちだって、シュウの気持ちだって、血が繋がってるってだけで、あたしには何もわからないのだから。



「…どういうこと?」


そう、震える声で問うてきたおかみさんに、ハッとしたシュウは視線を落とし、ごめんなさい、とだけ言った。



「本当のこと、ちゃんと話します。」